すると不躾にも、人の髪の毛へチュッとキスをして、ふわりと持ち上げるジョシュア。
その手慣れた仕草はどうでも良いけれど、修平と松岡さん以外の手には悪寒が走る。
昨日あんなに優しくかき上げてくれた、大切なヒトの感触が消えてしまうじゃない…。
「昨日セックスしただろ?」
「っ、な…!?」
「だって、マホの首に“アト”があるし。アノ男の匂いがする」
「っ・・・」
ジョシュアのイヤらしい発言のお陰で、ホテルへ戻って洋服を変えたい気分になった。
修平は翌日がお仕事の場合、見える箇所に痕を残す事はしない。きちんと弁えてくれる。
それだからと、勝手に安心してノー・チェックでやって来てしまった私が悪いもの…。
穏やかな朝とはいかない様相に、早くもフラストレーションを感じたのだけれども。
せっかく修平が忙しい最中にくれた優しさを無にするなんて、自分が許せなくなるから。
「う…っ」
「――離してくれる?」
なおも巻きついていたジョシュアのみぞおちに、目覚めの一発の鉄拳をお見舞いした。
一瞬だけ力が弱まった隙に、その場を切り抜けてスタスタと歩いて地下鉄の駅を目指す。
しかし直ぐ追いついたジョシュアが性懲りもなく、ピタリと隣を歩いて来るものだから。
ここはもう沈黙を貫く事として、少し乱れたヘアを直すとアトを隠すのみに終始した…。

