エリートな貴方との軌跡



彼のすぐ後方でドアがバタンと閉まり、再びシンと静まり返る室内に高ぶる鼓動。



先ほどまでの迷いと不安から、キュッとしがみつけば頭をそっと撫でてくれる彼。



どうしてこの人は、これほどまでに私の不安をイチ早く察知してくれるのだろう。



まるで優しすぎる彼の手の大きさが、ひとりで嘆いていた自身を恥じさせるようだ。



以前は修平を信じるコトだけに終始していたのに…、私は何を考えていたのよ…?




「…修平、あのね」


「うん、どうした?」


何時でも甘えさせてくれる彼の声韻は、このまま縋っていたいと思わせるけれど。



名残惜しくもキュッと掴んでいた指先の力を抜いて、はるか頭上の彼を見つめた。



背中へ回されている力強い腕に安堵してしまうのは、やっぱりズルいと思うけれど。



コチラの様子を窺うように、そのダークグレイの瞳でジッと見据えてくれるから。



背伸びをした私は少しだけ疲れている気がする彼の頬へ、そっと手を伸ばしてみた。



弱みを一切見せない修平に頼りきりだから、これ以上の負担は掛けられないもの…。



「明日…って、もう今日だったね。早いでしょ?だかっ…んっ」


“大丈夫よ、ありがとう”と続きを言うより早く、チュッと唇を覆われてしまった。



「ちょ…、しゅ…っ」


「ウソ吐いたお仕置き」


「ふ、ンン…ッ」

頬に触れていた右手も取られ、グッと捩じ込まれた舌先を受け入れて絡ませたりとか。



下唇を弄ぶように吸う彼の温度に絆されるとは、私もつくづく単純な生き物だけれど…。