いくら婚約していようとも、当然ながら仕事は仕事であって。
目立つ所では特に私情を挟まないように…と、心がけているけど…――
「…ホント、鈍感で困るな…」
「え・・・?」
「よく無事だったな…」
私の言葉にダークグレイの瞳を丸くさせると、困り顔のまま苦笑した彼。
意味が分からずに首を傾げつつも、そのまま歩を止める事なく歩いて行く…。
ようやくロビーを抜け、集約した視線や仕事から少し解放されたところで。
外気の冷たさに身を縮めていると、隣から伸びてきた手に右手を取られてしまった。
この骨ばった手の大きさも…、少しだけあたたかさが伝ってくる温度も。
もちろん大好きな人の感触だから、勝手に口元が緩んでしまう…。
「帰ってから教えるよ…、ベッドの中で色々と?」
「ッ…、修平さんのバカッ――!」
すると手にキュッと力を籠めつつ、こちらを見下げる彼の言葉に頬を膨らませると。
「もちろん俺は、真帆バカだしー」
「っ、もぉー!」
あまりに綺麗に笑うものだから、恥ずかしさ以上にドキドキしてしまった…。

