エリートな貴方との軌跡



凭れかかるというよりは、私を引き寄せるようにして抱きついて離れてくれない彼。



所詮オンナの力ではあしらう事も敵わず、ジタバタ暴れ窮地を脱しようとするだけだ。



「――何してる」


「しゅ、っ…」


その時コツコツと足早に近づいて来た靴音とともに、ひどく冷たい声が頭上で響いた。



思わず“修平”と呼びそうになり、慌てて口を噤んで声色を追うように見上げれば。



ただ一点を捉える修平の眼差しは、いつになくクールで此方もビクリとしてしまう…。



「何って。抱き締めてるだけですけど?」


そんな修平の様子すらも一笑に付すジョシュアは、さらにグッと力を込めて来た。


「離せ」


「・・・っ」


「何で?関係あります?」


背後に回られている私にはジョシュアの表情が読み取れず、何の身動きすら取れない。



強気な態度は相変わらずだけれど、敬語を使うあたり修平の事は分かっているようだ。



「当たり前だ」


冷たくワントーンの口調で答えた修平の腕が、力を失くしていた左腕をグッと掴んで。


「え、キャ…ッ」


その強さと行動に驚きながらも、解放された私の身体は前方へと傾れこんでしまう。



恥ずかしさから離れようとすれば、今度は修平の手で後頭部を抑えられて動けない。



「それってcolleague(同僚)の意味?それとも」


「――fiance(婚約者)だから」


舌打ちしたジョシュアの言葉を遮った彼の言葉で、鼓動の高まりが収まらないのに…。