この爽やかな香りと背後から漂うオーラは、間違えようもない大切な人だからこそ。
振り返って少し視線を上へと向ければ、予想通りにダークグレイの瞳を捉えてしまう。
「修ちゃん、おそーい」
修平の登場から、シンと静まり返った部内の空気を刷新したのは大神チーフの一声で。
「気色悪いぞ」
「また言うー」
「――大丈夫か?」
「う…、あ、はい」
呆れたような眼差しでチーフを一瞥すると、何故か心配そうに此方を窺ってくる修平。
ようやく来てくれた…という安堵感からか、私は悟られないようにと笑顔で頷き返す。
「――で、何か言ってた?」
「ああ、近いうちに日本へ視察に来るとね」
「ラッキー!俺も行っちゃお」
「オマエは良いよ。忙しいクセに」
「だからぁ、暇持て余してんのー」
「よく言うな…」
敢えて日本語を使ってくれたチーフと修平には、きっとバレているに違いないけれど。
ほんの少しだけ…、ガチガチに固まった身体と心がとき解れていくような気がしたの。
「ねー、マホ。彼のコト紹介してよ?」
「…っ、キャ――!」
そうしてコミカルなやり取りを眺めていた時、背後から重みとともに両腕を回されて。
「は、離してよ…!」
「ヤだね」
首筋に掛かる重みに嫌気が増して手の甲を抓れば、ジョシュアが愉快そうに笑った。

