ジョシュアは私の手をサラっと握って、そのまま試作部のとある部屋へと入室した。
「日本人の方って…」
アジア系の人が殆ど見受けられず、大柄な人々を窺うようにずっと見上げるばかりだ。
日本では標準的な身長の私だけれど、やはり異国では相当に小柄だと実感させられる。
お国柄のせいか、ロンドンより此方の方が恰幅の良い人ばかりだしなおさらだろう…。
「ああ、日本人はチーフだけだよ。
でもさ、マホってホントに小さいね」
「日本ではごくごくフツーです」
ストレートな発言に少なからずショックを受け、繋がれていた手を離そうとすれば。
「おっと――可愛いって言う意味だよ」
「お世辞なんて要りません!」
「マホは怒った顔もキュート」
あっけなくギュッとその手を再度握られてしまい、オマケの安っぽい言葉に苛々する。
こんな事で一気に嫌悪感が募ってしまうなんて、仕事中の私らしくないのに…。
「真帆ちゃん、お待たせー」
「あ、いえ…」
「あーあ、もう来ちゃった」
暫く対峙していた所で、白衣に身を包んだ大神チーフが陽気な声を響かせやって来た。
小さくチッと舌打ちをしたジョシュアが、ようやくその手を離してくれて安堵する…。
「オマエさ…大概にしないと、真帆ちゃんの“彼”は怖いよー?」
「へえ、会うの楽しみー…」
取り敢えず言えるのは、ジョシュアという不思議な彼も只者でない空気を持っていて。
いったい此処の部署の人間は、果たしてどんな本質を持ち合わせているのだろう…。

