生返事しか出来ず呆気に取られる私をよそに、その手を退かす事なく前進した先には。
盗撮類の持ち込み不可の為のチェックを受けて、彼から手渡された白衣に身を包んだ。
「マホも普段は白衣なの?」
「ええ、そうです。これを着ると、仕事だなって気分ですね。
ジョシュアさんは…」
スーツの上から着るのは動き難いけれど、まだ挨拶を終えていない状況では憚られる。
そう笑って頷き返したところ、何故かしら碧眼の瞳で不服そうな眼差しを向けられた。
「だからー、ジョシュアでいいよ」
「え、えーと、…はい」
首を傾げて窺っているジョシュアさんの言葉に、納得しつつも曖昧な返答となる私。
海外生活をしていたからよく分かるけれど、仕事が絡んでしまうと何だかダメね…。
「それと敬語もヤダ。マホの方が年上だしね」
「っ、ええ!?」
「そこまで驚くコト?ちなみに俺、27だよ」
「えと…てっきり、その…さっきチーフと対等だったから」
年下だったという事実に素っ頓狂な声を上げてしまい、ハハハと笑われるとは失態だ。
「言いたいコトは、ハッキリ言わなきゃ損だしね」
「それはそうですけど…」
ハッキリと言うよりねじ伏せてしまった彼の言動は、上司と部下とは言い難い気が…。
「だからぁ、もっと肩の力抜いて!」
「はぁ・・・」
色々思案していれば両肩に手を置かれしまい、特有のボディタッチに早くも頭が痛い。
不思議すぎる彼に連れられ、白衣に身を包んだ研究者たちの群れへと向かって行った。

