エリートな貴方との軌跡



やるしかない――と喝を入れる度に、上手い具合で心をヘシ折る周到さは凄まじい。



だから笑ってやり過ごすしか、私は自分の立ち位置を見つけられそうに無かった。



オブラートに包んだようでいて、“本社に戻せ”と意志の強さを見せつけられては…。



「はい、到着ー」


上手く会話も出来ないでいれば、大神チーフの穏やかな声でプリウスが停止する。



ホワイト基調のシンプルな外観の建物が、どうやら本社の誇りである試作部のようだ。



彼が車外へ出たのに続き、私も慌ててシートベルトを外してから車のドアを開けた。


「大神、時間5分オーバー」


「はよー、車お願い」

すると待ち構えていた男性が、レイバンのサングラスを外したチーフと話し始めて。


「自分で駐車場に納めて来い」


「えー、メンドい」


「早く行け」


「うわ、使えないねぇ」

ブツブツ不満を漏らす彼を見事に一蹴してしまうと、チーフが車を再始動させた。



大神チーフに敵うというより、手慣れた口調であしらう人物に唖然としていれば。



「あ、君が例の“真帆ちゃん”?」


「え、あ、はい!

日本支社より参りました、吉川と申します。よろしくお願いいたします」


体格の良い背恰好に碧眼の男性の視線が向けられ、私は慌てて名前を名乗る始末だ。



「アハハ、そんなに畏まらないでいいよ。

俺はジョシュア。アイツは放っておいて行こう?」


「ええ・・・」


目を細めて笑った男性に驚く間もなく、肩を引き寄せられて建物へと誘われて行く…。