常にスピード勝負な点で言えば、日本支社だってソレなりにこなす自負があるけれど。
本社と支社では、どうしても隔たりがあるような言い方に感じ取れて悔しさを覚えた。
だけれど今言葉を返しても何の意味も成さないから、ただ押し黙る事が正解ね――
「で、そのブラックスボックスを開発してんのが俺ら。
つまり、会社の“キー・ポインツ”はずっと奥地に隠してんの」
「…そうでしたか」
ジョーク交じりに話す試作部の大神チーフの言葉は、何故か呑まれそうな空気感を持つ。
ショールームに似た、ブラックボックスを用いる工場の脇をプリウスで通過して行けば。
「支社より設備も機器も揃ってるし、相当勉強になると思うよ。
まぁアクの強い人間の塊だけど…、ソッチもそうじゃない?」
「ええ、そうですね…」
「修ちゃん筆頭にー、やたらと笑顔ばっかな松岡とかねぇ」
「アハハ…、確かに」
問い掛けに苦笑交じりで返した私だけれど、一番のクセ者の発言に困惑するばかりだ。
支社内部でも松岡さんは頭のキレるクセ者と謳われているけれど、チーフは遥か上で。
これほど常に緊張感を与えつつ、不意の爆弾投下にドキドキさせる人はそう居ない――
「あ、今回来て貰った件は勿論、修ちゃんのお手柄だしさぁ。
冗談置いて、このまま居残って欲しいなー…なんてね?」
「・・・っ」
「真帆ちゃん、1週間よろしくー」
返事すら上手く出来ずに頷いた私を、口角を上げて一笑する自信家に苦戦の様相だ…。

