口では呆れているような素振りを見せても、嬉しくなるのが女心なのかもしれない。
何を考えているのか読めない修平だけれど、ふとした瞬間の喜びに倍増させられて。
「何なら、今から証明しようか?」
「ダメ…」
「ハハ…」
爽やかな香りが徐々に近づいた瞬間、ソレを口を尖らせて拒否した私を笑うけれど。
「…ココじゃなくて、2人の時にして」
その真意を伝えるには、流石に気恥ずかしさが先行して彼の腕をギュッと掴んでしまう。
「仰せのままに?」
「っ、悪ノリした…!」
すると“分かってるよ”と言いたげに一笑してから、エレベーターへと歩み始めた彼。
この横顔を向けられる度、ウヤムヤにされてしまうのは困りモノだね…――
待機するボーイさんに促されてエレベーター内へ入ると、パタンと静かに扉が閉まった。
「はい、コレが真帆の部屋のルーム・キー・カード。
このホテル、夜はこのカードをエレベーター内で通さないと動かないから安心だし」
「そっか…、驚いたけどありがとう」
カードを受け取りながら頷いた私だけれど、セキュリティシステムに感心した訳でなく。
「此処ならアパートより街中にあるし、真帆が一人の時も安全だと思ったんだ。
俺はコッチの会議も出るから、帰りが遅くなるのは確実だし…――部屋は別々な?」
こうして修平の優しい気遣いに感謝しながらも、喜びに浸っていた自分が恥ずかしくて。
「うん、お金使って貰った分以上に働くから…!」
「期待してるよ、係長さん?」
「…ホントにー?」
明日から始まる本社での仕事に全力を注いで、少しでも役に立てるように頑張ろう…。

