エリートな貴方との軌跡



飄々としたあたりは松岡さんに似ているけれど、早くも苦手意識を持ちそうになって。



とにかく意識を別へ傾けようと、徐々に都市部へと近づく風景に目を向けていた私。



「真帆…、眠いだろ?」


「え、あ、大丈夫です…」


「そう?」


無心でボーっとしていれば、修平には時差ボケをしていると勘違いされたらしい。



ダークグレイの瞳をコチラへ向けて、フッと笑った修平に私も笑顔で頷き返した。



確かに久々の海外のうえ、10時間もの時差があると未だ身体が慣れないけれど…。



「ねー、修ちゃん。

滞在先って、ペニンシュラで良かったよな?」


「ああ、よろしく」


「はいよー」


すると運転席から尋ねて来た、大神さんと彼とのやり取りでまたしても驚いた私。



松岡さんの言っていた出張滞在先は、会社が所有するアパートメントだったのに。



いま向かっているザ・ペニンシュラといえば、世界でも高級ホテルとして名高い…。



「どうした?」


「え、あ…何でもない!…です」


「真帆の“ソレ”は、納得出来ないな」


「っ・・・」


グルグル駆け回る疑問に思案していると、今度は眉を潜めてコチラを窺って来る修平。



この疑問符を今すぐ解消したいけれど…、大神さんの手前ソレを留まってしまう。



そんな車はやがて、ホテル名のスペルが強調されたエントランス前へと横付けされた…。