初めての本社出張、初めての本土上陸、初めての対面…、心配は尽きないけれども。
“不安を乗り越えた時に人はまた強くなれる”と、いつかの父が発した言葉のように。
笑顔で向き合うという、自身に掲げたモットーだけはいつ時も忘れずにいたいの…――
オヘア国際空港をあとにして、私たちは大神さんの運転する車で市内を目指していた。
ポカポカというよりも、既に日差しが強く感じるほどの気候が日本の5月とは大違いで。
「春なのに暑い、ですよね…?」
「ああ、シカゴは寒暖差が激しいんだ。
今はまだ春だけど、もうすぐに夏がやって来るよ」
「…え、そう、なんですか」
お洒落な街並みが続くロンドンと違い、シカゴのハイウェイから見える風景は圧巻で。
広大という言葉に納得する景色へ目を向けつつ、修平とのやり取りを重ねていれば。
「時に真帆ちゃん、聞きたいんだけど」
「え、は、はい…?」
いきなり運転席から発する大神さんに驚かされ、明らかにテンパった声を返してしまう。
「ハハ…、確かにオモシロイ。
ところで修ちゃんとは、プライベートでもそういう風なの?」
「…いえ、その」
「仕事で来てるから――ついでに言えば、大神に気を使ってる。
…そんな所。これが家でも続く訳ないだろ」
「あーあ…、修ちゃんに聞いてないんだけど。
俺が聞きたいのは、真帆ちゃんなのにねー」
ベントレーを颯爽と乗りこなし、軽快に笑う大神さんの意図がやはり分からない…。

