エリートな貴方との軌跡



日本とはケタ外れな人混みの中を颯爽と歩く彼の姿は、まさに旅行客のようだけれど。



目を丸くしていたのだろうか、そんな私の隣を歩く修平がクスリと一笑されてしまう。


「…想像と違った?」


「うん…、何だかビックリ」


アロハシャツにレイバンのサングラスをかけた、まさに南国人という印象を受ける。



勿論ビックリという言葉の中には、唐突な登場にも驚いた事を含んでいたけれど。



「フッ…、俺も初めて会った時は同じ」


「・・・ホント?」


「本社に来た事あるヤツしか、“アレ”が定番とは知らないと思う。

アイツWEB会議とか、人前に出る時はスーツに着替えてるし」


「不思議…」


「だろう――?」


修平の言葉にポツリと呟けば、同調してくれるから眼を見合せ思わず笑ってしまった。



「コラコラお2人さん。今からラブラブ光線発しないでよ」


するとスーツケースを転がし引き返して来た大神さんに、軽くクギをさされてしまう。



「す、すみません…」


「別にフツーだろ?」


「あー、ヤダヤダ。

修ちゃんの口から、“フツー”なんて聞きたくなーい」


「オマエな…」


口調もフランクだし、思っていたより柔和な立ち振る舞いをする大神さんだけれど。



「真帆ちゃんも大変だね?」


黒いレンズで隠した瞳でニッコリ笑われると、身震いしたくなるのは何故だろう…?