そんな思いもよらぬ声に驚いていたのは、どうやら私だけでは無かったようだ。
「修ちゃーん、真帆ちゃーん、コッチ!」
ニッコリ口元を緩めてながら、手をヒラヒラと振るサングラスをかけた褐色肌の男性。
珍しく目を丸くする修平と視線が合点した今、どう反応して良いのか分からなくて。
とにかくスーツケースをガラガラと転がしながら、呼び掛ける男性の元へ向かった…。
「…どうしてオマエが?」
対峙して尋ねた修平の方は、彼が出待ちしている事が本当に寝耳に水だったよう。
「えー、そんな冷たいコト言うなよー。
ウェルカム・ハグもしてないし?」
「ハイハイ…、久々だな大神」
「んー、修ちゃん相変わらずイケメンじゃん」
アロハシャツの出で立ちで、両手を広げた大神さんに呆れながら抱擁を交わす修平。
「気色悪い――」
「ヒドイなー、ねえ真帆ちゃん?」
南国ムードたっぷりの彼から離れてバッサリ言い切れば、クスリと笑っているから。
「え、そ、そうですね…」
動揺が抜け切らない私へ向けられる眼差しには、ただ苦笑を浮かべる事で精一杯だ。
「――だから大神、どうして…」
「ずっと“待ち侘びてた”から、俺が横取りしてきたの。
ほら真帆ちゃん、ソレ貸して。レディには重いでしょ?」
「…え、あ、ありがとうございます」
「どういたしまして。ほら行くぞー」
呆気に取られる私たちをよそに、ひとり先を行く大神さんの背中が大きく思えた…。

