大学時代は休みになる度に、母や瑞穂とよく海外へ飛んで遊びに行っていたけれど。
卒業し就職してからというもの、長期の休暇が取れたとしても周りと時間が合わなくて。
ずっと国内ばかりを巡っていたから、不安と楽しみという感情が隣合わせだったの…――
「真帆もう着くけど…、眠れた?」
「…うん、爆睡してた」
「フッ…、それは良かった」
ファーストクラスでの空の旅は、想像以上に心地良いモノですっかり熟睡していた私。
そろそろ離陸態勢に入るというアナウンスが流れたようで、修平に起こされたほどだ。
未だに寝惚けて目を擦る私を捉える、ダークグレイの眼差しが何時でも優しいから。
やっぱり目覚めた瞬間、一番に大切な人が視界に入る事に幸せを感じてしまうの…。
「ねえ修平…、オヘア空港って大きいのね?」
「だよな?アメリカで一番忙しいらしいよ」
「やっぱりアメリカだわ…」
「ハハッ、真帆が一緒だと退屈しない」
「もぉ、ソレってどーいう意味!?」
広大なシカゴ・オヘア空港に驚く私をからかう彼に、いつもながら頬を膨らませつつも。
入国審査や税関の手続きを終えて、荷物をガラガラ引っ張りながらロビーへ進んでいた。
到着出口では当たり前の光景である、名前の書かれたプラカードを持つ人が居る中で。
「おーい、修ちゃーん!」
「・・・っ」
特徴ある声と流暢な日本語で呼び掛けられ、私はビクリと肩を震わせてしまった…。

