ソレに自分の事で精一杯になるから、余裕を持てる人でありたいと思わされるから。
今回の本社出張から、たとえ僅かでも何かを吸収出来るように頑張りたいな…――
「もう搭乗手続き済ませようか?」
「うん…良く分かんないから、お願いね?」
「もちろん」
一式詰まったキャリーバッグをガラガラと転がし、出発カウンターへ向かった私たち。
海外に住んでいたとはいえ昔の話で、オマケに何時でも両親に任せきりだったから。
すっかり手慣れている修平の隣について、手続きの為にカウンターへと足を進めた。
因みに機内で寛げるようにと、シフォン素材のシックなネイビー色のワンピースだ。
落ち着いているけれどフェミニンなお洋服が、どうやら修平のお好みらしいから。
もともと好みだった服装の傾向は、こういう系統のお洋服ばかりで揃えてしまう…。
「黒岩様、いつもご利用有難うございます」
「ありがとう」
グランドホステスと彼の、スムーズなやり取りを眺めていると、ある事に気づいた。
取り敢えずキャリーバックを預ければ、彼から搭乗チケットを受け取ったのだけれど。
「…ねぇ、どうしてファーストなの…?」
「さぁ、どうしてだろう?」
実家はビジネスが定番だし、今回の出張も松岡さんの話からビジネスと思っていた私。
「し…修平は良いけど、私は…」
出張の為に、一介の社員がファーストクラスで向かって良い訳ないと返すつもりが…。
「大丈夫。出処は俺のポケットマネーだから」
此方の不安をスッと打ち消すほど、綺麗に一笑する彼にはやはり敵わないらしい――

