だけれど、会えると思っていなかった人物を目の当たりにして動揺しない方が難しい。
至極満足そうに手をヒラヒラ振って、呆然とする私にスマイルを見せつけられては…。
「ハイハイ、行くぞー」
「しゅ、修平…何で!?」
此方へ歩み寄って来た人物こそ、昨日は出張の為に顔を合わせていない松岡さんで。
出社していてオカシク無い時間だというのに、スーツ姿で何故ウチに来ているのか…?
スッと彼に腕を取られた私は、クスクス笑う修平へ真意のほどを尋ねたというのに。
「送ってくれるらしいよ」
「いやいや、そうじゃなくて」
「暫く会えないから、兄貴は寂しいの」
「はぁ・・・」
淡々と返されて頭を振れば、私を先導するスマイルキラーに一本取られてしまう。
「イイから乗って」
「はい…、お願いします」
彼の愛車である黒のムラーノのドアを開けられて、先ず私から後部座席へ乗り込んだ。
「修ちゃん、自分で閉めて下さいよー」
「…修ちゃんは止めろ」
直ぐに運転席へと回ってしまった彼は、乗り込む最中だった修平に嗾けているけれど。
「義理の兄弟だし、ねえ真帆ちゃん?」
「絶対に違います」
「えー、兄貴が可哀想ー」
「フッ…、温度差あり過ぎの兄妹だ」
意図が分からぬまま滑らかに出発した車内は、いつもの穏やかな時間が流れていた…。

