ずっと親友だった康太さんの自殺は、修平と名古屋まで引き離してしまうほど。



今まで帰れぬ位に密かに苦しんで、後悔とともに心の枷になっていると思うから。



生まれ育った大切な故郷での思い出までもを、苦しみで塗りつぶして欲しくない。



誰もが無敵のエリートと囃し立てるから…、そんな彼を時々心配してしまう…――



2人で2年前に訪れた熱田神宮に思いを馳せながら、メール送信を完了した私。



バッグから携帯電話を取り出し、大切に保存して来た“ある画面”を眺めていると…。



「真帆ちゃん、おはよ!」


「う、わぁ…!」


突然すぎる高らかな声とともにポンと肩へ手を置かれ、思わず驚き声が出てしまった。



「ちょっとー、その驚きっぷりはヒドくない?」


「え、絵美さーん…、そう言われても…」


無駄にバクバクと鼓動が速まった私は、呼吸を整えてから振り返ったのだけれど。



「だって、このカワイイ子が入れてくれたしねぇ」


フフフッと、してやったり顔でルックキラーの片鱗を覗かせる絵美さんに対して。



「吉川さん、…すいません」


「ううん…岩田くん、良いんだけどね…」


どうやら試作部の外へ出向いていた彼が、何故か絵美さんにハンティングされたようで。



プリンスくんは名の如く、朝イチからトラブルを生みだす事に長(た)けているらしい。



「っていうか!携帯ジッと見てたけど、どうしたの?」


「えっ…?」


彼の異名に再度納得するよりも早く、今日もキマった絵美さんに尋ねられてしまう…。