エリートな貴方との軌跡



乗り込んだエレベーター内で始終項垂れる岩田くんには、苦笑いしか出来ないけれど…。



「えっ、タクシーじゃないんですか?」


「んー…車だと時間計算出来ないし、先方は駅からすぐじゃない?」


「あ、そうっすね!」


「いいから早く行くわよー」


至ってマイペースな彼を促すと、ヒールなどお構いなしで急ぎ目に歩を進める私。



取引先であるC社は都内に構える立地を考慮すれば、電車を使うのが賢明だけれど。



とにかく品物の引き取りとともに、依頼主への謝罪に向かわなければならないのだ。



それにトラブル・プリンスくんへは、割に簡易な依頼品を回されてはいるものの。



完成してホッとした矢先に、今回のような事態に彼はいつも見舞われているのよね…。




約30分ほどでC社へ到着し、受付を済ませた私たちは小さな会議室へと案内された。



此処を訪れた事は何度もあって、アレ以来ご無沙汰だから懐かしく感じていれば。



数分も経たないうちに、ガチャッと慌ただしい音を立てて会議室のドアが開かれた…。



「お待たせしてすみません」


カツカツと靴音を響かせて入室して来る男性を、2人で平身低頭に出迎えると。


「いえ、とんでもございません。

この度はご迷惑をお掛けしまして、大変申し訳ございませんでした。

今回岩田に代わりまして、私が不具合についてお伺いさせて頂きたく思います」


「いえ、ご足労頂き感謝します、どうぞ」


真向かいの席へとついた男性は、頷きながら手ぶりで席へ着くよう促してくれた。



すると一礼して席に着いた私が名刺を出さない事に、隣の岩田くんは驚いたらしい…。