エリートな貴方との軌跡



初めて扱う原材料での仕事が舞い込む度に、躊躇いや不安を感じる事は常日頃。



だけれど裏を返せば、何時でも新鮮味を忘れずに頑張れる仕事ともいえるから。



今後もたくさんの失敗を繰り返しながら、すべてに真剣勝負で当たっていきたい…――




「吉川さん、すいません…!」


「えっ、何が…?」


出張まで早くも2週間を切り、サポート役兼デスクワークに従事している現在。



呼ばれて振り返れば、既に平身低頭状態で頭を下げている岩田くんの姿を捉えた。



試作から完成までに早くとも2週間は要する部署の為、私が抱える案件は実質ゼロ。



因みに修平といえば、出張に向けて仕事に猛追を掛けるほどの状況でほぼ不在の日々。



結婚式の準備より出張の準備に追われてしまい、内心ではパニック寸前だけれど…。



「そ、それがですね…、C社の件でクレームが…」


「どういう事?」


顔面蒼白…とまではいかないものの、ソレに近いモノを感じる彼の表情に苦笑しつつ。



不安を煽らないよう…そして現状を早急に聞き出す為に、落ち着き払って尋ねれば。



「はい…、その、規格から寸法が外れていると、先方から連絡が入りまして。

今すぐ引き取りに来て欲しいとの事です…、宜しいでしょうか…?」


「…分かったわ、すぐに資料持って行くわよ」


「は、はい…!」


“顔つきの理由”をすぐ察した私は、PCをパタリと閉じて簡潔に彼へ指示を流す。



さらに半ば呆れ気味の松岡さんへ視線を送り、岩田くんとともに部を退出して行った。