松岡さんの下で働いているのに、本当に本質が見えない不思議な人となりだ。
幾ら有能と持て囃されようが、スマイルキラーと影の異名がついていようが。
そんな些細な事を気にしないトコロが、松岡さんのエリートたる所以だろう。
彼と修平はタイプが全く違うけれど、たまに妬けるくらい仲良しだものね…?
「お帰りー」
「あ、ありがとうございます」
マグカップを両手に携えて戻れば、絶妙なタイミングでドアを開けて出迎えた彼。
私の片手から自身専用のマグカップを攫うと、そのまま席へと舞い戻ってしまう。
「あー、コレコレ。この香りと味が最高…」
「ネットで取り寄せていますしね」
ユラユラと湯気の立つ黒々しい液体からは、芳しい香りまで放たれていて。
周りの影響からコーヒー党へと変化して、ソレなりに拘りを持つようになったのだ。
「修ちゃんが好きだから、だろ?」
「そ、それだけじゃなくって…」
「答えが、モロ顔に出てますけどー」
「これが真顔ですし、すみません」
「あー、小悪魔顔ねー」
コーヒー党の党首に任命されてもオカシク無い松岡さんは、味を確かめながら一笑する。
「ところで松岡さん…、いい加減本題に入りません?」
「えー、折角のスキンシップタイムなのに?」
「…何か隠していませんか?」
話をガラリと替えたい私は、真向かいに座る彼をジーっと探るように見つめていた…。

