高ぶった心を落ち着かせて、勿論身嗜みも整えてから、役員室をあとにした私。
下降するエレベーター内で1人、今日に終えるべき事を考えながら過ごしていれば。
ポンと小気味良い到着音が響いた瞬間、あっという間にリアルへと引き戻された。
…と言いたいトコロだけれど、扉がスーっと開いた瞬間に出くわした人物アリ・・・
「お早いお帰り、…じゃなかったね?」
「すみません、課長さんをお待たせするなんて…」
そう告げてニヤリと笑ったスマイルキラーに、ワザとらしくニッコリ微笑んだ私。
役職で呼ばれる事を嫌う彼だからこそ、敢えてこの状況で呼んだのだけれど…。
「んー、ホントは覗きに行こうかと思ったんだけど。
流石にさ、“何のプレイ”的場面だったらヤバいし?」
「なっ…!ち、近いうちに、人事部からセクハラで通達させますね」
「えー、エロい係長の面倒を見てただけで?」
嫌味にも飄々と言ってのけた松岡さんに敵う訳もなく、やっぱり動揺させられて。
「もう…っ、松岡さん自体がセクハラなんです…!」
そうして突き出た言葉は、どれほど無礼なのか考える余裕も無いというのに。
「だから、手塩にかけて育てた妹にセクハラも何も成立しないし。
俺なんかよりどこぞのお偉いさんこそ、素敵に職権濫用中ジャン。
…今日は“どんなお説教”を受けたのかなー、真帆ちゃん?」
「し、知りません…、は、早く行きましょう…!」
これではもう堂々巡りをするだけだと、早々に白旗を振って彼の前を通り過ぎれば。
コツコツ…とヒール音を響かせて歩く背後で、やっぱり笑う松岡さんはクセ者だ…。

