ズルイなんて言いながら、このヒトトキを求めているのは寧ろ私の方だけれどね…。
すると、こちらを見下げていたブラウンの瞳が徐々に私との距離を置いていき。
まったく何事も無かったような素振りの彼に、乱れたままの自分が恥ずかしくなる。
急いでデスクから起き上がって、朱の差した頬に手を置いて鎮めようとしていれば…。
「フッ…、お仕置きは此処までにしておいて――
今回連れて行くのは、次回の打ち合わせも兼ねているんだ」
そんな私の行動に一笑すると、声色と表情がピタリと仕事モードに切り替わった修平。
「う、ちあわせ…ですか?」
「あぁ、松岡は丁度別口の大口依頼と部下の案件も抱えて動けない。
丁度出張の時期も重なるし、本社の試作部を覗くのも良い勉強だぞ?」
「・・・はい」
少なからずプレッシャーを受けて、あれほど急上昇した体温は急低下した気分でも。
役職のついた人間だからこそ与えられたチャンスを、潰してはいけないとも思ったの。
コクンと頷いてから、少しだけ遅れて出た返事の声色は震えてしまったけれどね…。
「真帆、そんなに固くなる必要は無いから――
如何なる時も“Self reliance”だろ?」
「ふふっ…、頑張ります」
そうガチガチに固まった私を解きほぐしてくれるのも、やはり修平の存在だからこそ。
だから不安に迷うより、これまで少しでも得た物を頼りに頑張らなきゃと思えるの。
「じゃあ、あとの詳細については松岡が教えてくれるから」
「はい、かしこまりました。
ふつつか者ですが、部長のお供として頑張ります」
そんな私の一礼に苦笑を浮かべた修平の真意を知るのは、もう少し先の事――…

