『てめえ・・・・なんで俺の名前知ってんだ?』



一応相手が女の子っていうことも汲みつつ、でもそれなりの警戒を示しながら土方さんが話しかけてきた女の子にそう聞いた。女の子はまったくひるむことなく、目を輝かせながらそのまま続けた。




『私の働いている店が島原界隈の近くにあるんです。あの辺りですごく有名なんですよ!新撰組の副長はすごく眉目秀麗な方だって』

『・・・・・・』

『それで、この前たまたま見かけたんです。他の隊士さんといらしてたところ』



そのときに顔を覚えちゃって思わず話しかけちゃいました、と笑いながら彼女はそう言った。




『私、凛って言います。こうして会えたのも何かの縁ですし、覚えてくださいね』

『・・・・覚えておこう』

『光栄です』



凛と名乗った彼女は土方さんと一通り会話を終えると私へと視線を移して綺麗に微笑んだ。



『あなたは?新撰組の人、じゃないわよね?』

『あっ・・・私は、葉月っていいます。わけあって新撰組に、』

『こいつは、屯所を貸してくれてる家主の娘だ』

『・・・・そうなんですか!』



本当のことを言いそうになった私の言葉をさえぎるように土方さんが嘘をついた。私は理由がわからなくて土方さんの顔を少し見る。目で、「いいから黙っておけ」と言われてる気がしてそのまま黙り込んだ。そんな私の手を、いきなりぎゅっと握ってきた彼女に私も土方さんも目を丸くした。



『・・葉月ちゃん!って、呼んでいい?』

『え、あ・・・えっと、』

『同じくらいの年よね?仲良くしましょう?』




彼女の勢いと笑顔に押されておずおずと頷いた。