でも、困ったように笑う表情には、単に迷惑というわけだけではなく、手のかかる弟を見ている兄のような気持ちも含まれている気がした。



「それで、沖田さんはどこに行かれたんですか?」


「・・・多分、屯所の近くの子どもたちのところだろう」

沖田さんは子どもたちに好かれているらしい。

わたしはあまり外出しないから分からないけれど、掃除や洗濯をしていた時、塀の外から沖田さんの名を呼ぶ子どもたちの声が聞こえてくることがあった。



「・・・懐紙って、大切なものなんですか?」

「・・・・・」

「・・・土方さん?」

私が懐紙について尋ねると、土方さんの表情が引きつった。

そして、しばらく黙り込んだ後、苦い顔をしたまま言った。


「もし総司がここに来たとしても、懐紙を持ってたから書いてある内容は見るなよ」

「え?」

「お前は知らなくていいことだ。いいな?」

念を押すようにして強く言われ、よく分からないままうなずいた。

それから土方さんは、私に不便はないかと尋ねて沖田さんを探してくると言って去っていった。



「(懐紙・・・気になるなぁ)」



土方さんの去っていく足音を聞きながら、ぼんやりと思った。