しばらく立ち尽くしていると斎藤さんが歩き出した。 「帰るぞ」と短く告げられ、頷いて斎藤さんの後ろを歩いた。 斎藤さんの背中を見つめながら、椿の花を見つめたときの横顔を思い浮かべた。 そして同時に、その横顔に何の励ましも、叱咤も言えなかった、まして返事すらできなかった自分の非力さに唇を噛み締めた。 きっと彼はあの椿に自分たち新選組を重ね合わせたのだろう。 いつ殺されても、誰を殺すことになってもおかしくない時代、生き急ぐように日々を駆け抜ける彼ら、自分を。