「真之介くん、手出して!」

「な、なんだよいきなり・・・」


「いいから!」



真之介くんは私に押し負け、右手を出した。頭には疑問符。


「はい。これあげるよ」

「?何だ、これ・・・」


私が真之介くんの手のひらに置いたのは桃の飴。この世界に来る前の日、友達から貰っていたことをついさっき思い出した。


「飴!桃味の」

「あ、飴!?んな高ぇのもらえねーよ!」

「でも、手伝わせちゃったし、そのお礼!」


この時代、糖分を摂取できるものは限られていたし簡単に手に入るものではなかっただろう。

でも、現代の私にとって飴はそんな貴重なものではない。


・・・今となっては、貴重なのかもしれないけど、なくても問題はない。



「・・・本当にいいのか?」

「うん。お腹すいてるんでしょ?」



私が尋ねると真之介くんは恥ずかしそうに目を逸らして頷き、飴の包み紙に手をつけた。


ぱくっ


「・・・・」

「おいしいでしょ?」


真之介くんは飴を口に入れた瞬間、大きな目をぱちぱちとさせた。


「こんなの食べたことねぇ・・・。すっげー・・・」

感動した様子で口の中の飴を転がしている真之介くんが可愛くて、弟がいたらこんな感じなのかなって思った。




幸親くんに続いて二人目。


ちょっと近づけたことが嬉しくて。




緩む顔を引き締めきれないまま、夕餉の準備をしに台所へ向かった。