「え、そんなのありっすか?!」
俺は大王に言った。
「なしに決まってんじゃん。だけど審査員のさ、…あの人。あの人が審査員長な限り、多大なる権利はあの人のモノならしい。」
大王が指をさす。
楽屋のテントから舞台の端を覗きこむと、審査員席の一番端に、その人が居た。
「藤川草子。このフェスの主催者の親友。」
彼女は音楽評論家であり、その道では有名。
藤川のプロデュースでバクチはデビューが既に決まっている。
水面下ではあるけれど。
しかし彼らは無名なのだ。
『musicmagazineフェス優勝』という経歴を彼らに与えて自分の経歴をさらに輝かしいものにしたい藤川と、ただただデビューしたいというバクチ。
二つのその気持ちが合わさって、まさに今それを実現しようとしている。



