大王は「人」を書くのに使った人差し指をもう一度利用した。
「ちょ、もっと静かに!しっ! 共同楽屋なんだから、そのバンドが居るかも知れないだろ!」
「「「「すいません…」」」」
彼が言うには、ここ、1、2年前から、このフェスが有名になったのをきっかけに、ある人に気に入られたインディーズが、必ず優勝するのだという。
どんな優勝などを決めるコンテストでも、「やらせ」説は浮上するが、このフェスは確実だと大王は言った。
「そのバンドが、…」
「「「「そのバンドが?」」」」
「バクチさーん、お願いしまーす!」
スタッフがそう言った。
3人組の男達。
この楽屋に居る全てのバンドをあざ笑うかのような顔をした。
俺には見えた。一瞬。
そして舞台に上がって行く。
「…あいつらだよ、バクチ。」



