「なんで居るんすか」
俺達2人は立ち止まった。
「なんでって、決勝出るから。」
「…居ましたっけ、1次審査の最初から。」
「…何コイツ、年上に失礼だろ。居たよ最初っから。」
「ミーティングやリハの時も?」
「居たよ。お前らの前でリハしてた」
嘘だー。
俺、知らない。
「鮎川、この人達知ってる?」
俺の後ろにいた鮎川に聞いた。
「うん。前に一回一緒にライブした。んでおっちゃんにココのフェスの後ろ盾頼み込んだけど断られて、実力じゃ無理だと思い地方のあるちっさいライブハウスいっぱい出まくって出場権を得たしょぼくれバンド。」
「「……」」
俺よりひどいこといっぱい言いすぎだろ…
お口が達者な大王でも、太刀打ちできなかったみたいだ。
「とっ、とりあえず、容赦しねえからな!お、覚えとけよ!お前達の前で演奏してビビらせてやるからなっっ」
そう言うとそそくさと彼は舞台に上がって行ってしまった。
鮎川って、意外と凄いかも。



