「これ、なんて曲。」
腕組み、脚組み、睨みつけるような目。
確実に「却下だ」と言われそう。
「『Run out』です…」
恐れ多いぜ、おっちゃんに見てもらっているなんて。
「へえ…。やっぱりお前の声がいいな、伝わってくる。」
少し笑ったように見えたおっちゃんの顔は、すぐにいつもの仏頂面に戻った。
髭も髪もボサボサだ。
「ありがとうございます…!!」
そんなこと言われたのは初めてだったから、俺は跳ねた。喜びを表現したくて。
「ま、このバンドで一番良いのもヤマトだけど、一番悪いのもヤマトだな」
「へ、どういう意味ですか」
周りを見渡す。
「やっぱり。」そんな目で俺を見てるのは鮎川だ。
「ギターだよ。下手くそ過ぎないか。毎日練習はしてるのか」
「してます。30分くらい…」
「もうライブまで2週間しかねえんだぞ。そんなこと言ってると周りに差をつけられて、『ヤマト、お前クビ』ってことになるぞ」
クビ…?!
それは勘弁してください…!!!
俺がどんな顔をしていたのかはわからないが、何故かユカが俺を見て爆笑していた。
なんだよ、意味わかんねーよ。



