「うわあ!ヤマト、そこ居たのか」


シュートに気付かれた俺は、とっさに彼女へ渡す予定だった紙切れをポケットに入れた。


なんであいつが彼氏なんだ…


「おおおう。もしかして彼女さん?」

信じられない信じたくない。
ほんとにこれは現実かい。


「うん。」

「…え」

「なに。」

「何でもないない。可愛らしい彼女さんだなと思って」


「あなたってよくここのファミレス来ますよね?」

「あ、はい」


初めてマニュアルの言葉以外で話しかけられたのに。

ちっとも嬉しくなかった。


「へぇ!てかココお前ん家から遠くないか?」

「いや、バンドで近くによく寄ってたから」

つまんない嘘をつく。



それでか!

ピカーンと閃いた彼は、自転車にまたがると「今からデートだからまたな」と言った。

彼女も「良かったらまた来てくださいねー」とお仕事スマイルで立ち去って行った。


未だ状況を呑み込めないのは俺だけだった。