「お風呂に長く入りすぎたみたい」

あたしは『あはは』と笑い声をあげた

「なら…いいけど」

大ちゃんは、まだ納得してなさそうな顔をして首を傾げていた

まっすぐにあたしの目を見つめて、心の中を読み取ろうとしてくるみたいに感じた

「あたし、もう寝るね」

あたしは大ちゃんと距離を開けると、自分の部屋に向かって歩き始めた

「陽菜?」

「な…なあに?」

あたしは部屋のドアの前で足を止めると、大ちゃんに振り返る

大ちゃんが、切ない目をしてあたしを見つめていた

「我慢するなよ」

「な…何が? あたし、我慢してないよ?」

大ちゃんが首を左右に振ると、寂しそうに微笑んで階段を下りていった

大ちゃん?

なんで、そんな顔をするの?

まるであたしの心を読んだみたいな顔をして、あたしより苦しそうな顔をしないで

あたしは、平気だよ

だって最初から、わかってたことじゃない

お金がもう無いって

治療代だって、やっと払ってるってわかってるのに…どうして手術をしようって思ったんだろう

生きたいって願う気持ちはお金がなくてもできるけど、本気で生き抜くにはお金がないと無理なんだ