「ありがとう」

あたしは、越智君と目を合わせて微笑んだ

「入院前に、デートしない?」

「え?」

「部活の後に少し。お茶をして帰るくらいしかできないけど、涼宮と二人で過ごしたい」

越智君が目を細めて笑う

あたしは頷くと、頬がぽっと温かくなるのを感じた

初めてのデート…になるのかな?

しぃちゃんと三人で…っていうのなら、何回もしたことがあるけれど、越智君と二人きりでお茶をするのは、初めてだよね

楽しみだな

どんなデートになるんだろう

越智君とゆっくりと話ができるんだね

誰も気にしないで、越智君と一緒に過ごせる時間ができる

そう思うと、心の奥がくすぐったくて、それでいてほんのり温かい

「越智君、あたし、今…すごく幸せだよ」

「俺もだよ」

越智君が、手に握り合っているあたしの手の甲にキスを落とすと席を立った

「越智君?」

「あまり長時間、家を開けると母親が煩いんだ」

越智君が、嫌なそうな顔を見せた

眉間にしわを寄せて、肩を持ち上げる

「お母さん、厳しいの?」

「いや…厳しいっていうか。部活の件をまだ、納得してないんだよ。親父がオッケーを出したから、強くは言ってこないけどさ。態度や口調がチクチクと刺さるんだよな」

越智君が「ふう」っと小さく息を吐いた

越智君、家にいるのが息苦しいのかな?

居場所がないようなことを、前に言ってたし、部活が越智君のストレスにならないといいなあ