君を愛す ただ君を……

越智君の家の病院で、精密検査を受けてから2週間が過ぎた

あたしとしぃちゃんとの関係は完全に壊れた……と、思う

しいちゃんから、睨まれることはあっても、話しかけられることはないから

越智君とあたしとの関係も崩れた

一緒に帰らなくなった

もともと教室が違うから、滅多に合わないし、部活でもランニングのあとで無言でホットの飲み物をくれるけど、それだけ

会話なんてしてない

登下校は大ちゃんの車でしているから、途中でばったり会うなんてこともなかった

大ちゃんは何も聞いてこないし、言ってこないから、あたしも何も言ってない

今日は、期末テストが終わって、久しぶりの部活だった

テスト1週間前から、部活はお休みに入り、テストから解放された今日からまた部活が再開する

あたしはジャージに着替えてみた

お腹と背中にホッカイロを貼り付けて、作業をしていた

ストップウオッチの数の確認や、選手のスコアブックの整理などをごそごそとやっていた

「もう…大ちゃんはすぐにぐちゃぐちゃにするんだから!」

あたしは文句を言いながら、スコアブックを学年別にして、さらにあいうえお順に並べ替えていると、ばさっと背中に何かが被さった

振り返ると、男性モノのジャージの上着があたしの肩にかかっていた

すぐ横を越智君が、無言で通り過ぎていく

頬に大粒の汗が流れていくのが見えた

あたしはベンチに目をやると、ホットレモンが一つぽつんと置いてある

越智君が、ランニング中に買ってきてくれたのだろう

「あ…ありがと!」

どんどんと離れていく越智君に向かって、あたしは慌ててお礼の言葉を口にした