君を愛す ただ君を……

越智君が、不思議そうな顔をして立ち止まった

「あたし、越智君が好きだよ。でもしぃちゃんも好き。誰かの悲しむ顔を見たくない。それに、誰かにこそこそと悪口を言われるのも嫌だよ。越智君、女子にすごく人気があるの。あたし、その重圧に耐えられるかな?」

越智君がふっとあたしから目をそらした

少し間をおいてから、越智君の視線を戻ってくる

「まわりの視線なんて気にしないでよ…って言いたいけど、きっと無理、なんだよな。じゃあ、俺とはもう無関係ってことかな? 俺が涼宮に近づかないほうがいいなら、そうするよ」

え?

あたしは越智君の顔を見上げた

越智君は、無表情であたしを見つめていた

越智君ともう話したりできなくなるってこと?

「そんな顔しないでよ。俺が、まるで涼宮を責めてるみたいな気分になる。俺は涼宮が好きだ。その気持ちは変わらない。だけどそれが迷惑だと言うなら、隠す。すぐに忘れられないし、俺は涼宮の傍にいたい」

越智君は、どうしてそんなにはっきりと言い切れるの?

まっすぐな熱い気持ちが、羨ましいよ

越智君みたいに、自分の気持ちを表にぱっと出せたら、きっと気持ち良いのかな?

「ごめん…涼宮。俺、今……これ以上は何も言えない。口にしたら、俺…涼宮を傷つけそうで怖い」

越智君が、手で口元を押さえて、あたしから視線を逸らした

「越智君…ごめんなさい」

あたしは越智君に頭を下げた

泣きそうになるのを堪えながら、あたしは越智君に背を向けると歩き出した

家まではあと少し

それまでは涙を見せちゃいけないんだ