部活が終わって、倉庫の前で大ちゃんに用具入れの鍵を渡していると、越智君がジャージのままで駆け寄ってきた

「涼宮、帰ろう」

「え? ジャージのままでいいの?」

「ああ」

越智君がにっこりと笑う

「風邪引かない?」

「馬鹿は風邪ひかないって言うだろ」

大ちゃんが、会話に割り込んでくる

「越智君は、頭がいいよ」

「んじゃ、あしたは風邪ひいて学校を休め。そしたら僕が、陽菜の送り迎えができる」

大ちゃんが、鍵をくるくるとまわしながら、嬉しそうに微笑んだ

「風邪、ひかねえーし」

越智君が、即答してから胸を張った

「ろくに寝てなさそうな顔をして、よく言うよ」

大ちゃんが、越智君の額を指先で小突いた

越智君は、右側の唇と持ち上げて笑うと、とくに否定はしなかった

越智君、寝不足なの?

「今回の期末、成績を落とすわけにいかないから」

越智君が笑顔を見せると、大ちゃんが「当たり前だ」と答えた

「期末までまだ時間があるのに?」

あたしは首を傾げた

越智君は、にこっと笑うとあたしの頭を撫でた

「部活、辞めたくないから」

越智君の温かい手の平が動くたびに、ちょっとあたしの胸の奥をちくちくさせた