もう、嫌だっ

どうして?

あたし、しぃちゃんに疑われるなんて…思ってもみなかった

『信じられない』って言われた鋭い言葉の針が、胸にグサリと刺さっていた

しぃちゃんが、越智君をすごく好きな気持ちを知ってたから…二人の関係を壊したくないって思ってたのに

しぃちゃんには、あたしと越智君が隠れて付き合ってるって思われてたなんて、辛いよ

しぃちゃん、違うよ

あたし、越智君と付き合ってない!

付き合ってないのに……

「陽菜、走るなっ」

後ろから手首を掴まれたあたしは、大ちゃんの大きな声で、びくっと肩を震わせた

階段を上る足を止めると、あたしは大ちゃんに抱きついた

大ちゃんの胸に額をつけると、声をあげて泣き出した

涙が次から次へと、目から流れ落ちていく

誰に見られてもいい

今は、大声で泣きたい気分だった

「あたし、しぃちゃんを裏切ってない。しぃちゃんの気持ちが痛いくらいわかるから……しぃちゃんの苦しむ顔を見たくなくて…でも、あたし…」

「陽菜、わかってるから」

大ちゃんが、優しい声で囁いてくれると、温かい手で背中を撫でてくれた

「あたし、どうしたらいいの?」

「普通にしていればいいんだよ」

「普通って?」

「陽菜を信じようとしないヤツは無視すればいい。そんなヤツは友人でも何でもないんだよ」

「そんな…だって、あたしは…」

「言葉で言って、理解できないヤツなんか、陽菜から捨てればいい。それだけだよ」

あたしは大ちゃんの胸を押して、距離を開けるとあたしは涙で頬を濡らしながら首を左右に振った

「嫌だ! そんな…冷たいこと言わないで」

「じゃあ、どうするの? ストレスは、陽菜の心臓に負担をかけるだけだよ?」

大ちゃんが一歩前に足を出すと、あたしの肩を抱きしめた

「信用してくれない人間に、すがり付く意味はない。短い人生なら、なおさら…もっと有意義に過ごすべきだよ」