君を愛す ただ君を……

越智君って、看護師の女性にもモテるんだね

身長があって、顔もバランスが整っていて精悍で、勉強も運動もできる

それに加えて、病院の跡取り息子ってなったら、看護師の女性も放っておかないか

…ていうか、看護師だけじゃなくて、まわりの女性全てが、越智君を見るよね?

将来もあって、越智君自身の格好良いし、性格も良いってなれば、放っておくほうがおかしいって思うかな

そんな人を、あたしは何も知らないっていう理由で振っちゃうなんて、勿体ないことしたんだなあ

なんて、いまさら思ってみる

でも、あのときは知らなかったんだもん

越智君が通院している病院の院長の息子だったなんて…

それに、勉強もできて、スポーツ万能で、人当たりも良くて、優しくて、温かい人だなんて、入学したてのあたしにはわからなかった

中学卒業とともに、今の家に引っ越してきた

だから、中学の頃の越智君は知らない

まわりにいる人たち、みんな…あたしは知らないし、どんな人かも知らなかったから

越智君が、皆に人気者だったなんて、越智君に告白されてから知ったくらいなんだよ

告白されて、意識して越智君を見るようになって、気がついたら、自然と目で追うようになってた

白衣が目の端に映ったあたしは、勢いよく顔をあげた

「せ…先生?」

越智先生が、ポケットに手を突っ込んで、微笑んでいた

「涼宮さんのお母さんに、電話しておいたよ。検査の件、了承してくれたし、すごく喜んでたよ」

越智先生は、あたしの肩をポンと叩くと、エレベータに向かって歩き出した

「あ…ありがとうございます」

あたしは立ちあがると、越智先生の背中に向かってお辞儀をした