君を愛す ただ君を……

ライは練習が終わるなり、さっさと家に直帰した

まあ、アパートに最愛の彼女が待ってるっていうんだから、即効帰りたくなり気持ちはわかるけど

金のない俺はどうやって、この貧しさを切り抜けるか…が問題なんだな

素直に凛ちゃんの手料理をご馳走になっていれば良かったかな?

でも…さ

せっかく想い通じ合った二人の邪魔はしたくねえじゃん

俺って結構、気を使うヤツなんだよ

能天気で、その場限りなヤツって思われがちだけど、結構まわりに目をくばってるんだぜ

「ああ…財布がヒモじいと心まで寂しくなるもんだなぁ。しかも金がねえってわかってるから貧乏な後輩たちは絶対に寄り付かねえし。金の切れ目は縁の切れ目ってね。やっぱ世の中、金だよなあ。金がモノ言うっつてさあ……ああ、もう駄目だ」

俺はブツブツと独り言をぼやきながら、大学の正門に向かって歩く

スポーツバックが、いつもより重たく感じるのはきっと…俺の腹が減りすぎているからだ

「佐山」

「あ? 天使の囁きが聞こえる! とうとう俺の耳もおかしく…」

一瞬にして呆れた顔に変換した佐久間が、平手で俺の後頭部を叩いた

「夕飯、一緒に食べて帰ろうよ」

「ああ…その誘いは物凄く魅力的で嬉しいんだけど…俺、財布はあっても中身がすっからかんだからさぁ…」

「知ってるわよ。何も入ってない財布なら、私も食堂で一緒に見たでしょ」

「そっか」

俺は頭を振って、頷いた

「奢るよ。知らないとは言え、『女たらし』って言っちゃって申し訳ないし。それに……」

佐久間の視線を俺の下半身に移動する

「痛かったでしょ?」

「ものすごーくっ…ね」

俺は笑うと、佐久間がくすっと微笑んだ