俺と凛は玄関に向かって歩いた

小原さん、俺…幸せになるよ

恋人とうまくいったよ

小原さんには言えなかったけど、俺の好きな人は小原さんの好きな人の妻だったんだ

…て、もう知ってるかな

天国で、俺らのことを知って怒ってるかな?

それとも笑ってる?

俺は生きる

何があろうとも生きて、人生を全うするよ

「莱斗さん? どうしたんですか?」

凛が顔をのぞかせてくる

俺は首を横に振ると、足に靴をひっかけた

言えないな

凛には…俺が小原さんと知り合いだったなんて

凛は知らないほうがいい

元旦那の浮気相手が、自殺したなんて知ったらきっとショックを受けるだろうか

知らないまま…俺と一緒になろうよ

「凛、好きだよ」

俺は玄関のドアを開けようとしている凛に向かって口を開いた

凛はよく聞こえなかったみたいで、振り返ると「え?」と聞き返してきた

「いや…何でもない。バスケ試合、観戦しに行かない? チケットを貰ったんだ」

俺は海堂さんの奥さんからいただきたチケットを見せた

「一緒に行っていいの?」

「もちろん。凛と行きたいよ」

俺の言葉に凛が嬉しそうな顔をして、幸せそうに微笑んだ

凛、愛してる

これからはずっと一緒にいような

俺は独りじゃないんだ

孤独はもう感じないよ、凛……







【番外編】『天才』は『孤独』との戦い

      終わり