「近くで見れば…なんとなく」

「そっか」

「どうしたの?」

「え? あ、親父とちょっとね」

「何か、あったの?」

「あ、いやぁ。大したことないんだけど」

越智君は言い難そうに、言葉を濁して、笑顔をあたしに見せた

「もしかして…部活のこと?」

「まあ、ね」

越智君は、気まずそうな顔をしながらも頷いてくれる

「高校は勉強に集中するって約束したのに、部活を始めたって言ったから。ちょっと喧嘩した。それだけだから。別に大したことないだろ?」

越智君が眉をひくっと持ち上げてから、にこっと笑った

「大したことだよ。だってそれって……」

あたしのせい…でしょ?

「俺が決めたことだ。だからって勉強をおろそかにするわけじゃない。きちんと今の成績を維持して、さらに部活をやる。そう約束し直したから」

「すごく大変なことじゃないの?」

「大変だと思う。だからって苦痛とは限らない。そうだろ?」

「あたしにはわからないよ」

「『大変』だと思うことと、『苦痛』は違うよ。俺は、涼宮と過ごす時間を作るためなら、頑張れる。どんな努力も惜しまない」

越智君のまっすぐな視線が痛かった

強い意志が感じられるから…ちょっと怖いって思った

凄いけど、そのまっすぐで堅い意志が、眩しすぎる

あたしにはない…その強い信念に、あたしの心がついていけないよ

越智君のように強くはなれない