君を愛す ただ君を……

8時に練習が終わると、俺はダッシュでアパートに帰る

汗臭いジャージを脱ぎ、シャワーを浴び、そして着替える

髪を整えてから、財布と携帯をズボンにねじ込んで、アパートを飛び出した

駅に向かいながら、腕時計で時間を確認する8時45分だ

あと15分もすれば、凛に会える

今なら、なんとなく彼女に会うためにバスケの練習をセーブして、デートにエネルギーを残しておく男の気持ちがわかる気がする

たぶん、今の俺もその一人だ

練習量をセーブしているつもりはないけど、どこかで怪我をしないようにと気を使っている

怪我をしたら、凛に会えない

それに練習が終わっても、こんなに走れるんだから、やっぱ俺は俺自身が気づかないところでセーブをしているのだろう

駅の階段を駆け上がると、改札口の前で足を止めた

駅の電光掲示板に目をやる

9時前に到着する電車はあと2本ある

そのどちらかに、凛が乗ってくるのだろう

俺は乱れている呼吸を整えながら、駅の壁に寄りかかった

シャワーを浴びてさっぱりしたはずの俺の身体には、また汗が流れている

半袖のシャツの袖口で、顔の汗を拭っていると、視界の隅に人影が映った

「すごい汗ですね。待ち合わせの時間までまだあと10分もあるのに…そんなに急いで来なくても」

凛がにっこりと笑って、ハンドタオルで俺の顔の汗を拭いてくれた

タオルからは凛の匂いがする

香水じゃない凛の匂いだ

俺の全身の血の温度が一気に急上昇する

凛のタオルを持つ手首を掴むと、俺は人目も気にせずにキスをした

凛に触れたい

凛の体温を感じたい

凛を俺だけのモノにしたい

欲望が、俺の心の中で爆発する