君を愛す ただ君を……

「ま、あれだな。犯罪じゃねえけど、男の恨みは買うだろうな。世間からも冷たい目で見られる。それでも好きなら、仕方ないんじゃないの? 本心なんて、誰もわかんねえだろ。お前がいつも孤独と戦ってるなんて…誰も知らないように、な」

佐山がニヤッと笑った

俺も、佐山につられて微笑んだ

「別に…付き合うわけじゃねえよ。ただちょっと見かけただけ。名前もわかんねえし」

いや…名前は知ってる

『凛』だ

母親が呼んでたな

んで、あの病院の娘だから『越智 凛』だ

でも結婚したんなら、名前は変わってるか

「見かけた?」

「ああ。母親に無理やり見合いしろって言われてたとこを、な。次に見かけたときは、左手の薬指に指輪してたから」

「人妻ぁ?」

佐山が大きな声をあげた

「もう…会うこともないんだろうなあ」

俺はぼそっと呟きながら、ブラックのコーヒーを口に入れた

苦さが喉に沁みる

「お前が年上の女が趣味だとは…知らなかった」

「いや、年下。たぶん一つか二つ下だと思う」

「んじゃ、まだ10代ってことかよ。もう誰かのモノになっちまってんの? 人生、勿体ねえなあ」

「好きで結婚したわけじゃあないと思うけど」

俺がコーヒーが、マグカップの中で揺れるのを眺めた