君を愛す ただ君を……

放課後、あたしは体育館にある準備室に向かった

まだ部活が始まるまでには時間があるから、きっと大ちゃんがいるはず

あたしはノックをしてドアを開けると、大ちゃんがジャージで机に向かっていた

「失礼します」

他にも、作業をしている先生は何人かいる

あたしはそろそろと準備室の奥に進むと、大ちゃんの席の隣で足をとめた

「あの…岡崎先生」

『大ちゃん』で呼びなれているせいか、『岡崎先生』と呼ぶのにちょっと抵抗を感じた

言い難いっていうのかな?

大ちゃんは『大ちゃん』であり、あたしの中では『先生』っていうイメージがまだ定着してないからかもしれないね

「陽菜、どうした?」

大ちゃんが、ポールペンを持ったまま顔をあげると、あたしの顔を確認した

くるっとボールペンが、大ちゃんの指の上で回転した

「今日、病院に行こうと思うの。だから…」

「部活を休む?」

あたしはコクンと頷いた

「病院に行ってくれるのは嬉しいけど、その病院には誰と行くの?」

大ちゃんの声が低くなった

「え?」

「昼休みに、越智愁一郎が来て、部活を休みたいって言ってきたから。僕の考えすぎなら、いいけど?」

大ちゃんの視線が痛いくらいに身体に突き刺さる

どうして? そんなことを聞いてくるの?

それって、越智君と行くって言ったら、怒るんでしょ?

『僕と一緒に行こう』とかって言うんでしょ?

あたしは下を向くと、左右の手の指をくるくると回した