あたしは莱斗さんの前に立つと、莱斗さんが座ったままぎゅっと抱きしめてくれた

「莱斗さん、頑張りすぎです」

「それだけが俺の取り柄だから」

莱斗さんの顔があたしの胸に埋まる

莱斗さんは気持ちよさそうに瞳を閉じた

「凛」

「はい」

「好きだよ」

「はい」

「付き合ってくれる?」

「はい」

「良かった」

莱斗さんの腕に力が入り、強くあたしを抱きしめる

「もう我慢するなよ。俺が試合前だからとか、試合中だからとか気にしないで。連絡して」

「うん」

莱斗さんの指が、あたしの頬を撫でる

痣や傷を避けて、頬、顎、首を触ると最後にあたしの唇に指先を触れた

「怖い?」

「え?」

「身体が震えてる。怖い思いしたんだろ? 無理しなくていいから」

あたしは自分の手を見た

莱斗さんに触れられてるとわかっているのに、震えていた

無理やり旦那に抱かれた記憶が、まだ残っているからか

身体が勝手に恐怖と認知して、震えていた

嬉しいのに

莱斗さんに触れてもらえて、嬉しいはずなのに、身体が震えていた