君を愛す ただ君を……

「私の1年って何だったんだろうね。付き合ってる人がいないなら、付き合ってって半ば強制に近い形で、付き合ってもらったけど…愁にとったら、結局それだけだったんだろうね。付き合えって言われたから、付き合った…みたいな。そんな軽い関係だったんだよ」

「そんなこと…」

だって越智君、しぃちゃんとクリスマスを過ごそうとしてたんだよ?

いつも帰るときは、しぃちゃんの鞄を持ったり、少し離れてても家まで送ったりしてたんだよ?

ただ言われたから、付き合ったとは思えないよ

「1年一緒にいたけど、私たち…何もなかったんだ。付き合って1年もすれば、一通りの経験はするじゃない? キスとか、そういうの。一度もなかった。休日、私が誘えばデートしてくれたけど、それだけ。私のしたいように、やりたいように自由な付き合いだった。でもそれは私に興味がないっていう裏返しだったのかも」

「まさか。だって越智君、毎日のようにしぃちゃんを送ってたじゃない。頭を撫でたり、鞄を持ってくれたり…あたし、見てて羨ましいカップルだなって思ってたよ」

「それだけだよ。陽菜が居る前だけ。陽菜が電車を降りた後は、私に触れてくることなんてなかった。鞄は持ってくれたけど、ね」

しぃちゃんが膝を抱えて、身体を丸めた

しぃちゃんの目から、涙がポロリと零れ落ちていく

「昨日、いろいろ考えちゃった。考えてみたら、私たちって形だけのカップルだったなって思って。1年間を振り返ってみて、良い想い出はたくさんあるけど、愁の想いを一度も聞いてなかったなあって。好きなのは、私ばっかりで。それに愁が適当に付き合ってくれてたんだなあって気がついた」

しぃちゃん、そんなこと言わないで

だって越智君も、きっとしぃちゃんに想いがあるから付き合ったんだと思うし

想いがないのに、1年も恋人同士でいられるなんて…そんなことない

想いがあるから、1年も続いたんだよ

ただ越智君は、あたしの命の短さを知ったから、勘違いをしてるんじゃないかな?

「あたし、聞いてみる。越智君に、しぃちゃんのこと聞いてみる」