君を愛す ただ君を……

「ねえ…アキさん、どうしてアキさんはパパと結婚をしないの?」

夕飯の準備をしながら、あたしはアキさんに疑問をぶつけてみた

アキさんは丸焦げにした玉ねぎの残骸を見つめてから顔をあげた

「愁平さんにとっての『妻』は一人だけだから」

アキさんが何の迷いもなく、答えを教えてくれる

アキさん…って強いなあ

あたしのまわりにいる人たちって、皆強い

自分らしく生きる術を知ってる気がする

「また…焦げ臭いんだけど! またアキさんがやらかしたの?」

仕事を終えて、莱斗さんと一緒に家に来たお兄ちゃんが眉間に皺を寄せた

「どうして私だってわかるのよ」

お兄ちゃんに、向かってアキさんが指をさして不満そうに声をあげた

「凛が失敗するばすがねえし」

「え?」

「凛はずっと俺らの食事を作ってくれたし。そこら辺のファミレスよりウマい」

お兄ちゃんの言葉にあたしは、嬉しくなる

「お兄ちゃんに初めて言われた」

「あ? そうだった?」

お兄ちゃんがとぼけた顔をした

松葉杖で立っている莱斗さんが、ソファに座るのが見えた

「うん。みんな、出来て当たり前って感じで…あたし、あまり褒められたことがない気がする」

「そりゃ…俺も同じだから」

あたしは箸を持ちながら、首を横に傾けた

「同じ母親に育てられたんだぞ? 医者になるのが当たり前。部活なんて以ての外。恋愛…ふざけないで。勉強第一、学年10位以内に入るのが当然。そういう考えの母親だぞ。褒められるはずがないだろ」

お兄ちゃんが肩を持ちあげた

アキさんが話をしているお兄ちゃんを完全無視状態で、ライターを投げつける

お兄ちゃんが慌てて、ライターを掌でキャッチした

「そこの彼も……ん? あれ? どっかで見た顔だ」

ライターを投げようと手を振り上げたアキさんが、目を丸くして莱斗さんを見た