君を愛す ただ君を……

「俺たちはあんたの人形じゃない。自分ができなかったことを、子供に押し付けるな。自分は勝手に親父と離婚をして、親父を苦しめておいて……いまだに親父を責めるのはなぜだ? あんたみたいな女を親父はいまだに受け入れてるのを見るアキさんを気持ちを考えたことがあるのかよ」

「あんな泥棒猫なんか…」

「親父とアキさんが付き合い始めたのは、あんたと別れてからだ。親父はずっと家族を愛してた。性格がねじ曲がったあんたでも、親父は妻として愛してた。それを壊したのは、あんただよ」

お兄ちゃんの声に、ママの目に涙が浮かんだ

パパは確かに家に帰らない人だったけど、病院に行けばいつも仕事をしてた

目の下にクマを作って、何日も寝てなさそうな顔をしながら、家族には笑顔を見せてた

パパが、浮気しているってママから聞いたときは、「はあ?」ってパパに怒りを感じたけど

でもいつ病院に遊びに行ってもいるパパが、浮気する時間があったのかな?って思うと、今なら不思議に思える

「妻に関心をなくした男と一緒にいろとでも? 凛は違うでしょ? 関心が薄れたわけじゃない」

ママがあたしの顔を見た

「最初からそんな感情なんてなかった。ママが幸せになるからっていう言葉を信じて今まで、ママの言うとおりに生きてきたけど…幸せだって思えたことなんて一度もなかった」

「何を言ってるの? 優秀な医師と結婚できて、幸せじゃないっていうの?」

「幸せじゃないよ。全然、幸せじゃない。ママの思う幸せと、あたしの思う幸せは違う。仕事の地位なんて関係ない。あたしは愛が欲しい。あたしを愛して、抱きしめてくれる人がいい。あたしがどんなに間違った方向に進もうとも、優しく抱きとめて、道を正してくれる…そういう人がいい」

あたしはちらっと莱斗さんを見る

莱斗さんがにこっと笑ってくれた

「圭輔君だって…」

「彼はあたしを愛してるわけじゃない。嫌がるあたしを無理やり抱くような男の人に、愛情があるとは思えないよ。今回は、ママが何と言おうとあたしは戻らない。離婚する。あそこはあたしの家じゃない」

あたしはママに背を向けると、病院の中に入った

勢いに任せてスタスタと病院の奥に進んだ

ふと足を止める

初めて……逆らった

ママに口答えをした