君を愛す ただ君を……

「愁一郎…あなたならわかるわよね。永田さんが優秀な医師だってこと」

ママがお兄ちゃんの腕に手をかけようとする

が、お兄ちゃんが肩をびくっと跳ねると、ママから逃げるように足を横に移動した

「触るなって何度言ったらわかるんだよ。俺はあんたに触れられようとするだけで、拒否反応が出るんだ」

お兄ちゃんが、さらにママから距離を開けた

「愁一郎…そんなことを言わないで」

ママが目じりを下げてすごく寂しそうな顔をした

「やめろよ。そういう演技。気持ち悪いだけだ。俺はあんたに殺されそうになったんだ。拒否反応が出たっておかしくないだろ。言っておくが、俺は永田を優秀な医師だと思わない。命を助けるべき立場にいながら、人を傷つけるようなヤツが優秀だなんて思いたくないね」

お兄ちゃんが、腕を組んでママを睨んだ

お兄ちゃん、本当にママが嫌いなんだね

階段から突き落とされて、記憶を失い…記憶を戻したお兄ちゃんは、もうママを母として認識したくないみたい

記憶を失う前までは、嫌いでも一応、己の『母』として対応している部分はあったけど

今は完全に、敵視している

そういうのを見ちゃうと、ママが可哀想って思っちゃうけど……

「優秀なのよ、永田さんはっ!」

ママが意地になって、声を張り上げた

まるで子供のようだ

「マ…マ」

あたしが前に足を出そうとすると、莱斗さんが手首を掴んでぐいっと引き寄せた

「行くな。俺、足痛いから」

「え?」

「追いかけられないだろ」

あたしは視線を下にする

右の靴の踵を踏んでいる足が視界に入る

「なに…これっ! すごい腫れてるじゃないっ。どうしてこんなになるまで放っておくのよ」

あたしの言葉に、お兄ちゃんがしゃがんで莱斗さんの足に触れた

「…っつ」

莱斗さんの顔が痛みで激しく歪む